白昼夢 鳩野 深透
20070817 『白氏アンダーグラウンド』収載


 一つ、ふたつ、みつよついつむ、
 色とりどりの浮き沈み。
 白い頬に日が差せば、瞳は遠く夕を視る。
 喉は唄えど聴く耳はなく、
 入日入日に忍ぶ蔦……

「また、最後まで続かなかった?」
 唄が途中からきれいな声だけになっていたので、彼は静かに声をかけた。
 白木の格子に手をかければ、お手玉は無造作にころがっていた。
「……落とした」
 完全にすねている。最後まで歌いきったのはただの意地だったか、体勢ももはや畳に伸びていた。
 頭をこちらに向けて、仰向けになった兄と眼が合う。きちんと着付けたはずの襟が少しよれていて目をそらした。
(……僕たちは。)
(瞳の中に夕映えを飼っている)
 よじ、と転がって手を突き兄は身を起こす。
「ティー、開けて」
「嫌だって言ったら?」
「がまんする」
 ティーロは吹きだした。
「何、それ」
「だって私が頼んで、つくってもらったんだし」
「……そーゆーこと言ってると、そのうちとんでもないことされるよ」
「何だ?聴こえなかったぞ」
 それには答えず小さく笑いながら、ティーロは外からしか開かぬ錠を上げた。

「……あ」
 ニコラルーンは目を瞬かせた。
(なんか、視ちゃった)
 大きく伸びをする。畳が青々とよい香りをしている。この座敷牢にも久々に大分手を入れて、この畳も張替えを終えたところだった。
……カジャ・ニザリが寝転んでいた畳も、張ったばかりのように青々としていた。ティーロ・ニザリは、今よりほんの少し、気持ち程度だけ幼く見えた。
(変な兄弟……)
 これはからかいの種になるだろうか。でも弱みになるのは弟氏だけだろうな。
 ひっそりと笑ってから、彼は外から静かに錠を下げた。