向日葵のトンネルを駆け抜けていくとその先にはレモネードのお店が出ている。
 空にも雲にもちいさな彼を超える背丈の向日葵にさえ夏色の光の紗がかかり、隣を歩く人をいつにも増して未然の白に染めている。
「日射病は、炎天下で皮膚の末梢血管が拡張するだろう?結果的に脈が速くなって血圧が低下するんだ」
 だから無理したらだめだぞ、という言葉とともにしかめつらしい講義口調もやわらかな声で相殺され、幼い情操にその人の笑顔とともに焼きつく。その種類のデータは既に膨大なものになっているけれども、全然上書きする気になれないのだった。
「レモネードを二つ。あとクッキーと、イチゴをもらおうか」
 そういう彼の小さな顔が屋台の注文口に届くのに、つま先立ちをしないではギリギリの背丈なのだと、この頃の僕はまだ気づいていないはずだ、とティーロは思った。
 未然の白。
 それは毒のように強い夏の粒子と反応して、たとえば永遠という鏡仕掛けのギミックを人の心に住まわせる……。
 そんなことを考えながらもあのイチゴは一粒一粒凍らせてあって半解凍で食べるのが美味しいのだったと思いだしている彼は、それを食べるうす色の唇と舌こそが自分の思考の本題だとも知っていて、現実で自分を起こす兄の声に、空と雲と向日葵とレモネードがどこか遠くに追いやられていくのを感じていた。




この絵につけてもらったお話です。
幼い兄弟かわいいよかわいいよ!弟さんはこういう記憶を積み重ねてどんどん兄さんに恋慕するようになっていったんだったらいいな…。

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